山本雄基「Parallel Circles」
クラウス・フリーデ (インデペンデント・キュレーター) / 2012
山本は非常に手の込んだプロセスによって作品を生み出している。 様々なサイズの木製パネルの支持体にアクリル絵具を重ね、さらに透明のアクリル層を何度も被せる。
そしてそれらを繰り返し繰り返し磨き、最後の行程において光沢のあるニスを塗る。 こうしてできる作品が完全に乾燥するまでは数週間かかることもある。
彼がフリーハンドで描いた、空間と色のイメージを与える円形はこれ以上なく正確なものだが、 多くの作品では筆の軌跡やニスの流れ、磨いた痕跡とそれぞれ違った手作業の名残りが見られる。
一見すると彼の作品は円形の集合体以外には何も現わしていないかのように思える。だがよく眺めてみると、深みのある数多くの層が目に入ってくる。 透明の層の空間が半透明の色彩とを入れ替わったり、または不透明な色によって空間が塞がれる。 これらは最大10層を超えて重なることがあり、そこで生み出される空間は自らの形から逸脱し、だまし絵のような錯覚を与えてくれる。
山本は作品の中で、独自に機能しつつも謎の多い、フラクタルを思い起こすシステムを表現する。
カオス理論を基としたこのプロセスは、類似性のある数学的次元を感じさせ、 またそこから連続した絵画の構造も根本的に存在させる。
見る者の目は、さまざまなサイズのカラフルな円や点の中から確かな構図を幾度となく発見するだろう。 ここで「parallel circles」という作品名が意味を持つ。なぜなら特定の層に存在するそれら円のパターン配列は、 決められた間隔を空けて並列的に描かれているのである。
それは三角形、長方形、または正方形などさまざまである。
また数多くの作品の中でクリーム色や光沢のあるアクリル絵具の層が競合し、平穏を与えるような淡々とした柔らかさを軸として見ることができる。
「僕の作品では、個人的な感情を、抽象的でも普遍的な言語にて表わそうとしています」、と山本は言う。
この表現を彼は実に建設的でバランスが取れた、理想主義的な絵画技術や工夫によって成している。
同形状の抽象的な繰り返し、視覚的な遮断やスペース、連なりと多様なプリズム的色彩空間が、 物語から切りだされたような瞬間を豊潤さの中に創り出す。 これらの円や点は画面に固定されているが、同時に重力とはまるで無縁のようであり それぞれがその可動性と移動範囲を示唆してくる。
全てが絵画空間内で動きを孕んでいるのだ。
歴史の中で「層」は深い意味を持ち、また「時」という新たな次元と関わってくる。 宇宙的観点の無限と、現実的、物理的な経験空間の中で、鑑賞者は前述の層の他にも、順列によって時を感じられるのである。
山本の各々の作品名は、「絵の中に存在しないかのように思える要素」、 または「マイノリティーであるにもかかわらず、定義付けられる重要な要素」を示している。
例えば「invisible space/ふかしのすきま」と名付けられた作品には、少なからず見える空間が存在している。 しかしこのアーティストはその「そこに在る不可視空間」にも存在意義を与えている。
6つの色鮮やかな作品からなる「dancing grayzone(6 color loop)」では、幾何学的形状を作り、異なる色空間へと向かう赤、青や黄色などの、明確な円とは対照的な小さな空間をも取り扱っている。「Gray Zone」とは医学の分野では大きな腫瘍のような増殖を指す。
山本雄基は日本と欧州を繋ぐ絵画の伝統の中に立ち、遠距離と近距離の扱い方、そして絵画の視覚的手法と深みのある表現を極めている。
- Yuki Yamamoto 個展リーフレット/ MIKIKO SATO GALLERY(2012発行) 掲載
そしてそれらを繰り返し繰り返し磨き、最後の行程において光沢のあるニスを塗る。 こうしてできる作品が完全に乾燥するまでは数週間かかることもある。
彼がフリーハンドで描いた、空間と色のイメージを与える円形はこれ以上なく正確なものだが、 多くの作品では筆の軌跡やニスの流れ、磨いた痕跡とそれぞれ違った手作業の名残りが見られる。
一見すると彼の作品は円形の集合体以外には何も現わしていないかのように思える。だがよく眺めてみると、深みのある数多くの層が目に入ってくる。 透明の層の空間が半透明の色彩とを入れ替わったり、または不透明な色によって空間が塞がれる。 これらは最大10層を超えて重なることがあり、そこで生み出される空間は自らの形から逸脱し、だまし絵のような錯覚を与えてくれる。
山本は作品の中で、独自に機能しつつも謎の多い、フラクタルを思い起こすシステムを表現する。
カオス理論を基としたこのプロセスは、類似性のある数学的次元を感じさせ、 またそこから連続した絵画の構造も根本的に存在させる。
見る者の目は、さまざまなサイズのカラフルな円や点の中から確かな構図を幾度となく発見するだろう。 ここで「parallel circles」という作品名が意味を持つ。なぜなら特定の層に存在するそれら円のパターン配列は、 決められた間隔を空けて並列的に描かれているのである。
それは三角形、長方形、または正方形などさまざまである。
また数多くの作品の中でクリーム色や光沢のあるアクリル絵具の層が競合し、平穏を与えるような淡々とした柔らかさを軸として見ることができる。
「僕の作品では、個人的な感情を、抽象的でも普遍的な言語にて表わそうとしています」、と山本は言う。
この表現を彼は実に建設的でバランスが取れた、理想主義的な絵画技術や工夫によって成している。
同形状の抽象的な繰り返し、視覚的な遮断やスペース、連なりと多様なプリズム的色彩空間が、 物語から切りだされたような瞬間を豊潤さの中に創り出す。 これらの円や点は画面に固定されているが、同時に重力とはまるで無縁のようであり それぞれがその可動性と移動範囲を示唆してくる。
全てが絵画空間内で動きを孕んでいるのだ。
歴史の中で「層」は深い意味を持ち、また「時」という新たな次元と関わってくる。 宇宙的観点の無限と、現実的、物理的な経験空間の中で、鑑賞者は前述の層の他にも、順列によって時を感じられるのである。
山本の各々の作品名は、「絵の中に存在しないかのように思える要素」、 または「マイノリティーであるにもかかわらず、定義付けられる重要な要素」を示している。
例えば「invisible space/ふかしのすきま」と名付けられた作品には、少なからず見える空間が存在している。 しかしこのアーティストはその「そこに在る不可視空間」にも存在意義を与えている。
6つの色鮮やかな作品からなる「dancing grayzone(6 color loop)」では、幾何学的形状を作り、異なる色空間へと向かう赤、青や黄色などの、明確な円とは対照的な小さな空間をも取り扱っている。「Gray Zone」とは医学の分野では大きな腫瘍のような増殖を指す。
山本雄基は日本と欧州を繋ぐ絵画の伝統の中に立ち、遠距離と近距離の扱い方、そして絵画の視覚的手法と深みのある表現を極めている。
- Yuki Yamamoto 個展リーフレット/ MIKIKO SATO GALLERY(2012発行) 掲載