YUKI YAMAMOTO山本雄基

作品について

山本雄基 / 2016
 僕の絵画は一見すれば水玉模様の抽象画ですが、僕の現実世界での立ち位置の取り方や周りへの視点は画面へ直接的に影響し、また自作からも逆にこちらへ影響してきます。相互的なフィードバックによる、生きかたの確認行動のためにこのような絵画を制作しているのかもしれません。

 現実を見ると例えば、表と裏、右と左、光と闇、男と女、、、のように、無数の対称的なレッテルを貼ることで、単純化され、わかりやすく切り取られた物事が溢れています。しかしそのような場合、対称性のあいだに含まれる豊かな事柄を省いてしまっているようにも感じてます。作品を通して、認知しづらい中間領域こそを意識し、対称性の融和を実感したいと思っています。それは希望の可視化とも言えるでしょう。

 作品の構造を少し説明すると、綿キャンバスの下地に多いもので10層を超える透明のアクリル絵具(メディウム)を積層させて塗っており、各層は平らに研磨し、そこに多数の円形を描写しています。不透明色の円が散らばる層と、一面透明色の中にたくさんの色の無い円がくり抜かれている層を交互に重ねていくのが基本プロセスです。 そのため一層ごとに図と地が常に反転し続けるような視覚効果が生まれます。また、違う層の同じ場所をくり抜く円=ヴォイド(穴、空虚、無)の領域を作ることで、それらが階層を超えた位置にある円と交錯し複雑な奥行きを作り出します。これらを作品毎に一定の法則性(あるいは法則性の破棄)を考えながら配置していきます。作品表面は平らで、光沢を持たせており、描写の厚みは5~10ミリほどになります。色彩の選択において大切にしていることは、色彩に属している空間作用、および美しさと肯定的なエネルギーで画面を満たすための作用です。そして、すべての過程において、絵画そのものの存在感を強く意識しながら制作をしています。

 なぜ円形を使うのかといえば、そっけなく無個性でありながら、根源的な強い形を持っているからです。明確な形を保持したまま虚と実が入り混じり、曖昧で両義的な絵画空間、それを求める中で必要な選択でした。形自体には特定の意味を与えたくないので、匿名性の強さと感情が抑制できる点においても有用です。また、円は特定の方向性を持たない形です。形の「向き」から解放されることで、空間の作用に集中して取り組むことができます。一方、円は明確な中心も持っています。画面に浮かぶ円の数だけ中心が存在し、中心同士の関係が時に不可視のラインを想像させるのです。

円形の重なりが時代の価値観を飛び越え、意識の外側や、新しい普遍へ向かうことを願いながら作品制作をしています。